介護保険事業者が取り組むべきこと

介護保険のゆくえ

「資格を持って入職するのだから、できてあたりまえ」たいまいの契約金を支払わないとなかなか人が雇えないこの時代。その代償とばかりに、胸膨らませて入職したばかりのケアマネジャーに、ついついベテランと同じレベルを求めてしまってはいないでしょうか?

ケアマネジャーが足りない

介護支援専門員が不足している現状について考えてみましょう。介護職の中でもとくにケアマネは何をしても集まらない。

介護業界はますます受容が高まっており、いよいよ高齢化社会のピークに突入し、介護は今まで以上に重要な役割を果たしています。

しかし、あらゆる募集にもかかわらず専門職が集まりにくくなっています。企業側はやむなく人材紹介などを利用し、大きな契約金を払って資格者を引き入れる現状があるのです。

しばらく一緒に仕事をしてみないと、人となりもわからず、入社した方もその職場があっているのかどうかわからない状態での入職は企業側にとっても、就職する側にとっても大きなリスクとなります。

ひと昔前なら3カ月くらいは使用期間をもうけ、お互いの仕事ぶりや気持ちを推し量ったものですが、いわば博打のような求人でしか雇い入れることができないというのは、すでにそこから双方に過剰な負担がかかってきます。

おそらく企業側は、その金額に値するべく内容を、新人ケアマネに求めてしまうのが人情かもしれません。とうのケアマネジャーにしてみれば「え、いきなり」「教育体制完備じゃなかったの」「みんな忙しそうで相談できない」などで、一年継続できない人を多く見かけます。
また『有能な人は、ヘッドハンティングされるから、紹介会社に残った人はダメだ』などの偏見がささやかれる原因にもなります。

もはや、一般的なハローワークなどでは誰も集まらない時代になってきました。おそらく資格を持っている人は山といるはずの、ケアマネジャーがキャリアを選択しないのはなぜなのでしょうか?

ひとつの理由は、介護業界の労働環境の厳しさです。長時間労働や夜勤、身体的・精神的な負担が大きい仕事であるため、多くの介護支援専門員が仕事に就くことを躊躇してしまいます。また、介護業界の給与水準もまだまだ低く、やりがいを感じながら働くことに繋がらないと感じている人が多いようです。

さらに介護業界には実務経験や資格を要するために、初めて就職するには勇気がいることも理由のひとつです。それにまだ介護という仕事のイメージがネガティブにとらえらえていることも要因にあげられるでしょう。

ケアマネジャーはどこで挫折するのか

介護業界においてケアマネジャーは重要な役割を果たします。かれらは利用者のケアプランを作成し、適切なサービス提供に責任を持ち、本来なら自分の仕事にやりがいと誇りを持てるはず。

ケアマネジャーが挫折する大きな原因は、業務の多様さと多忙さ、それに伴う重責にあります。

利用者や家族の多種多様な要望や意見に対応し、ストレスやプレッシャーにさらされる場面が多い中、職場のフォロー次第では会社での挫折を感じてしまうのは容易に想像がつきます。

介護保険改正で、持ち件数の幅が広がったのは経営者にとってはプラスかもしれませんが、ケアマネジャーにとっては負担が大きくなったことを意味します。

ベテランほど困難事例を抱える比率が高く、一件担当するのに相当な時間をかけなければなりません。これで持ち件数を増やせとなると、どこかで手を抜くしかなくなります。
真面目なケアマネジャー程、上司から強制されることなく、自分のペースで丁寧にプランに取り組みたいと考えるのではないでしょうか。
行政の思惑に反して、ひとりケアマネが後を絶たないのは、それらの背景も手伝っているものと思います。

ケアマネジャーが会社に求めるもの

かれらにとって働きやすい職場を考えてみましょう。

まず労働時間や休暇制度の充実、業務負担の適正化が求められます。つまり、ケアマネジャーたちを束ね、バックフォローできる上司、あるいは専門のカウンセラーやキャリアコーチによるコーチングを受けられる環境の提供が必要です。
さらにかかせないのが給与水準の向上で、会社に求める大きな要素のひとつでしょう。

次に仕事の充実感が求められます。各ケアマネジャーのスキルが伸ばせるような、適正な仕事の配分により、かれらは利用者の笑顔や成長を見ることで、やりがいを感じることができるようになります。

会社側は常に組織のサポートを意識し、チームとしての活動を基本に、組織内のコミュニケーションや情報共有を円滑に行なう環境を整えることが大切です。

介護支援専門員が足りない現状を考えると、介護業界の課題やケアマネジャーの求めるものが見えてきます

今後も介護業界の受容は高まっており、人々が安心して高品質のケアを受けられるためには、ケアマネジャーが職場で挫折することなく、長期的に活躍できる環境が大事です。

介護業界の継続のために、行政の決定待ちではなく、企業側もみずから人材確保と、定着率の向上に取り組むことが必須課題なのです。

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